サンドボックス¶
Reyn のサンドボックスレイヤーは、ワークフローが宣言したポリシーをカーネルレベルの強制に変換します — OS コードはどのワークフローが実行されているかを知りません。これは P3(OS がランタイムエンジン)と P7(OS コードにワークフロー固有の文字列を含めない)の直接的な適用です。ワークフローは 何が必要か を宣言し、OS が どのように強制するか を選択します。
サンドボックスは パーミッションモデル を補完します。パーミッションモデルは op の実行前にディスパッチ時点で宣言スコープを強制し、サンドボックスはサブプロセスの実行中にシステムコールレベルで同じ境界を強制します。この 2 つのレイヤーは独立しており、組み合わせて使用します。
SandboxPolicy フィールドリファレンス¶
src/reyn/security/sandbox/policy.py で定義 — 各バックエンド(Seatbelt/Landlock/Noop)が実際に受け取る dataclass。sandboxed_exec Control IR op 自身のフィールド(argv、network、allow_subprocess、… SandboxedExecIROp 定義)とは別物です — op は LLM/skill 向けの envelope で、意図的に旧来の allow_ プレフィックス語彙のまま据え置かれています(#3901 — 両者はミラーではない。reyn/core/op_runtime/sandboxed_exec.py が一方を他方へ変換します)。
write_paths を除く全フィールドが完全 compat(owner ruling B、#3901)をデフォルトとします — サンドボックスの役割は許可された操作の裏側を bound することであり、起動元シェルが既にできることを再決定することではありません。
| フィールド | 型 | デフォルト | 意味 |
|---|---|---|---|
network |
bool |
true(compat) |
アウトバウンドネットワーク接続を許可。主要な外部流出ゲート — #3901 ③ では退役していない(下の2つのパス軸とは異なり)operator が明示宣言する permission-∩ 軸で、config で allow された host でも network: false の下では拒否される。 |
write_paths |
list[str] |
[] |
サブプロセスが書き込み可能なファイルシステムパス(厳密なガード)— デフォルトで閉じている唯一のフィールド(カーネルバックエンドが直接消費する、オペレーターが事前に知り得ない値のため)。書き込みは読み取りを含む。~ は展開される。 |
read_deny_paths |
list[str] |
[](compat) |
広読み込みサーフェスから拒否する機密パス(多層防御、opt-in)。deny-after-allow をサポートするバックエンド(Seatbelt)のみ適用。#3901 以前は OS レベルの機密パス7件(~/.ssh、~/.aws、~/.gnupg、~/.config/gcloud、~/.kube、~/.docker/config.json、~/.netrc)がデフォルトだった — オペレーター(や MCP client のような、信頼できない第三者コードを実行する呼び出し元)が明示的に設定してその保護を戻します。読み込み軸のみ deny。 |
write_deny_paths |
list[str] |
[] |
書き込み軸専用の deny リスト(#3901)、read_deny_paths と対をなす。#3901 以前は Seatbelt が read_deny_paths の未文書化の副作用として書き込みも deny していたが、Landlock はその副作用を再現しておらず OS ごとに同一ポリシーの意味が違っていた — このフィールドが両バックエンドの読む real field を1つにしてそのギャップを閉じます。書き込み軸のみ deny。 |
deny_subprocess |
bool |
false(compat) |
サンドボックス対象プロセスの子プロセス生成を deny — #3901 以前の allow_subprocess の deny-list 形の逆。Linux (seccomp) / macOS (Seatbelt: true の時 process-fork を deny、対象自身の exec は process-exec* で動作) で適用。 |
env_deny_names |
list[str] |
[](compat) |
サブプロセスへ引き渡さない環境変数名 — #3901 以前の env_passthrough allowlist の deny-list 形の逆。デフォルト(空)は環境全体が引き渡される、つまり起動元シェルと同じ信頼レベルを意味する。 |
timeout_seconds |
int |
120(#3903①、2026-08-11 — 以前は 60) |
ウォールクロック上限(超過時にプロセスを強制終了)。LLM の exec 呼び出しは max_timeout_seconds までより高い値を要求できる。 |
max_timeout_seconds |
int |
600(#3903①) |
timeout_seconds(policy のデフォルトと LLM が要求する override の両方)が照合される operator 制御の上限 — 狭めれば LLM が要求できる範囲が実際に狭まる。LLM がこれを広げることはできない。拒否(切り詰めない)の挙動は sandboxed_exec op リファレンス を参照。 |
バックエンド選択テーブル¶
get_default_backend(config) はプラットフォームとインストール済み extra に基づいてランタイムでバックエンドを選択します。reyn.yaml の sandbox.backend 設定キーで自動選択を上書きできます。
| プラットフォーム | 条件 | バックエンド | 備考 |
|---|---|---|---|
| macOS | < 26 | SeatbeltBackend |
sandbox-exec 経由の SBPL プロファイル。上流で非推奨 — Apple が macOS 26 で削除予定。 |
| macOS | ≥ 26(将来) | AppleContainerBackend |
未実装(Component E、延期)。NoopBackend にフォールバック。 |
| Linux | カーネル ≥ 5.13 かつ sandbox-linux extra インストール済み |
LandlockBackend + seccomp-BPF |
pip install reyn[sandbox-linux] が必要。Landlock はどの ABI でも外向きネットワークを制限しない — pin された landlock パッケージがネットワークルール API を一切公開していないため。network: false は別の機構が担保し、backend が一度だけ WARN を出す。 |
| Linux | カーネル < 5.13 または sandbox-linux 未インストール |
NoopBackend |
監査のみ、強制なし。 |
| その他 | 任意 | NoopBackend |
監査のみ、強制なし。 |
NoopBackend が使用される場合、Reyn は初回呼び出し時に一行 WARN をログ出力します。代わりにハードフェイルさせるには sandbox.on_unsupported: error を設定してください。
封じ込め self-test¶
バックエンドが選択されるのは、それがこのマシンで実際に deny を発火した場合のみです — 主張している全ての軸で。解決時に Reyn はそのバックエンド自身の wrap 経由で短いサブプロセスを起動し、実在するバックエンドなら必ず拒否すべき2つを試みます: write_paths の外への書き込みと、deny_subprocess: true 下でのプロセス spawn です。どちらかが成功してしまえば、そのバックエンドは主張どおりには封じ込めていない ∴ sandbox.on_unsupported が「バックエンドが存在しない」場合と同様に適用されます。
これが在るのは、「機構が在る」と「機構が効く」が別の主張であり、これまで前者しか検査されていなかったからです。バックエンドは、存在し import でき、それでいて完全に不活性であり得ます ∴ 存在だけを問う検査は、何も強制されていない状態で通ります。self-test は後者を、その主張を語っている当のホスト上で問います。
コストは1プロセスあたり probe 2回(短いサブプロセスが数個、数十ミリ秒)でバックエンド名に対してキャッシュされます。実際に real backend を解決する run だけが払い、sandbox に触れない run は払いません。chat 起動経路にも乗りません。
なぜ probe が2つで、assertion 1つ増ではないか: 2つの軸は矛盾する policy を要求します — write probe は syscall 層から自軸を隔離するために deny_subprocess: false を設定し、spawn probe はそのフラグ自体が主題なので true を要求します ∴ 1回の launch で両方は witness できません。そして2つの検査は独立に落ちます: Linux では write 境界は Landlock、spawn ゲートは seccomp ∴ filter が死んでいても path rule は動きます。write だけの検査は、そのホストを「封じ込め済み」と報告します。
なぜ「通った方だけ残す」ではなく両方必須か: 検査は分解できますが、保護は分解できません。 Landlock は通常の write を govern しますが chmod 権限を一切持たず、path ベースの truncate も handled set の外です ∴ seccomp が無ければ、どちらも無統治です。Linux 6.8 で実測(Landlock 発効・filter 不在): write_paths 外のファイルへの open() は拒否され、同じファイルへの os.truncate() は成功して中身を消しました。それらの syscall を拒否しているのは、allowlist に載せないことによる default-deny filter です(backends/seccomp.py の _EXCLUDED_UNGOVERNABLE 参照)。∴ Landlock-without-seccomp は「弱い sandbox」ではなく「首尾一貫しない sandbox」であり、spawn probe が filter が load したこと自体を witness することで、その穴を閉じ続けます。
各 probe は deny の前に positive control を確立します: policy が 許可している 操作が実際に起きたことを観測できなければ、通過ではなく「未 witness」と報告します。これが無ければ、何も実行しなかった wrap もまた禁じられたファイルを残さない ∴ 「何も起きなかった」が「deny が発火した」と全く同じに読めてしまいます。spawn probe は control をもう1つ持ちます(deny_subprocess: true 下で fork しない コマンドは動き続けねばならない)— その機構が default-deny の syscall filter であり、全てを拒否する filterとfork だけを拒否する filterは、それが無ければ判別不能だからです。
覆っていない範囲: probe が witness するのはファイルシステムの書き込み境界と、プロセス spawn ゲートで、いずれも command-level の wrap 経由です。ネットワークゲート、read_deny_paths、one-shot run() 経路の別の preexec ruleset を exercise するものではありません。通過したバックエンドは deny を2つ発火した — 主張するすべての deny の証明ではありません。
macOS 26.3+ と SeatbeltBackend: macOS 26.3 では sandbox-exec は継続出荷されています。SBPL プロファイルに (import "bsd.sb") と (allow process-exec*) を含めることでバックエンドが動作します。詳細は FP-0017 の post-dogfood fix landing notes(コミット b477508)を参照してください。
reyn.yaml 設定¶
sandbox:
backend: auto # auto | seatbelt | landlock | noop
on_unsupported: warn # warn | error | ignore
backend: auto— 現在のプラットフォームで利用可能な最適バックエンドを Reyn が選択(推奨)。backend: noop— 強制を明示的に無効化(イベント経由で監査するが強制は不要な CI 環境などで有用)。on_unsupported: error— 使用可能なバックエンドが無い場合にワークフローディスパッチを失敗させる(設定されたバックエンドがこのプラットフォームに存在しない場合に加え、存在するが封じ込め self-test に失敗した場合も含む)。強制が必須要件となる本番環境で使用。
ワークフローでのサンドボックスポリシー宣言¶
ワークフローの skill.md で、sandboxed_exec を実行するフェーズに sandbox: ブロックを追加します:
# skill.md の抜粋
phases:
- name: run_script
instructions: |
分析スクリプトを実行する。
sandbox:
read_paths:
- "{{workspace}}/input"
write_paths:
- "{{workspace}}/output"
network: false
timeout_seconds: 120
{{workspace}} テンプレートは OS がランタイムでワークフローのワークスペースディレクトリに展開します。ワークフローオーサーは絶対パスをハードコードしてはなりません — ワークスペース相対パスにはすべて {{workspace}} を使用し、システムパス(/usr/bin、/usr/lib 等)については dylib ロードに必要なパスがバックエンドによって自動的に許可されます。
関連情報¶
- FP-0017 — 設計の根拠、コンポーネントの経緯、バックエンド実装の詳細。
- Control IR:
sandboxed_exec— op スキーマとフィールドリファレンス。 - パーミッションモデル — サンドボックスがランタイムで補完するディスパッチ時点の宣言スコープ強制。